2006年7月1日より施行される中国特許審査基準における二重出願に対する取扱につき、出願人にとって不利な方向へと変更された。ここでそのポイントを紹介したい。
中国においては、出願人は特許の保護期間をより長く、且つ特許権をより早期に獲得するため、同一発明について同時に又は前後して発明特許と実用新案とを二重出願する方法がよく使われている。
この場合、通常実用新案が先に登録され、特許出願の実体審査段階で、ファイナルオフィスアクションの際に、審査官は出願人に、既に得ている実用新案特許権、又は審査中の特許出願のいずれかを選択するよう要請する。
そして、出願人は一般的に既に得ている実用新案特許権を放棄する旨の書面を提出し、当該実用新案の権利を放棄する。また、従来では、この実用新案特許権は後に登録される特許権の発効日から放棄されることになる。
しかし、改訂審査基準によると、上記のように既に得ている実用新案特許権を放棄する場合、当該権利は後の特許権の発効日でなく、当該実用新案の出願日から放棄されることになる。
そうすると、出願人にとり次の点に留意しなければならないと考えられる。
実用新案特許権をその出願日から放棄すると、発明特許の授権公告日前に、同一発明につき、特許権が存在しないものになる(発明特許の公開による仮保護の権利は存在するが)。もし、この間に、出願人が実用新案権をもって侵害行為に対して権利行使(侵害訴訟、行政摘発等)をしていた場合、権利行使後の実用新案権の放棄により、この権利行使の根拠がなくなるため、損害賠償金の返済が求められるなど、遡及する恐れがある。したがって、本来出願人の狙いであった早期権利化と長い保護期間との両立は成り立たなくなると考えられるが、実用新案の権利を早期に取っておくと、模倣品対策としてある程度は有効であるので、二重出願のメリットはまだ少しは残っていると考える。
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